心理学とメンタルヘルスの情報
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レガシーバーデン
レガシーバーデンは、インターナルファミリーシステムズ(Internal Family Systems)理論で使われる概念で、「遺産的な負担、過去の経験や世代を超えて伝わる心理的な負荷やトラウマ」を指します。このことを、世代間トラウマや世代を超えたトラウマと呼ぶこともあります。私は常に、レガシーバーデンによって無意識に受け継がれた生き方に関する人々の物語に興味を持っていました。これらは必然的に私たちの一部となり、しばしば私たちの本来の自己意識に干渉します。
レガシーバーデンは、戦争や紛争を繰り返す民族間にも見られます。多くの場合、人々はこの世代間トラウマに気付くことさえなく、それにただ従う(例:自分の惨めな立場を受け入れ、そのように振る舞い、先代が受けた扱いを自分も受ける)か、逆に過剰補償する(例:先代が受けた扱いをやり返す、もしくは自分より弱い対象者に対して先代が受けた扱いをする。報復、復讐、連鎖的虐待などがこれに該当する)ことが多いのです。もちろん、人権を主張することは重要であり、争うことでしか権利を得られない場合もあります。しかし、争い(過剰補償)を繰り返しても私たちの権利や求めるものを得ることはできず、その結果、私たちの子供たちを含む他者にレガシーバーデンを引き継いでしまうことがあります。その場合、歴史を繰り返すのではなく、他の方法を考える必要があります。そして私は個人的に、私のクライアントや社会の分断や紛争に見られるレガシーバーデンは、個人レベルで気付き自分で解放しない限り、世の中からなくならないのかもしれないと考えています。少なくとも私のクライアントがレガシーバーデンの影響を解放し、本来の自己として生きることができることを願っています。
自己
「自己」という概念は、哲学、心理学、社会学などさまざまな視点から議論されてきたため、その定義も多種多様です。心理学では、「自己」は、「自分」セルフ、「自己認識」セルフアウェアネス、セルフコンセプト、「自己評価」セルフアプレーザル、「自己規制」セルフコントロール、アイデンティティーなどのキーワードで研究・論議されることが多いです。心理学的には、自己とは、個人が自分自身を認識し、理解する能力、つまり自己認識を指すことが多いです。したがって、自己認識や自己評価、自己規制などが心理学的な研究や理論の中で重要なテーマとなっています。「自己」は幼い頃から私の興味の中心だったので、私の学士論文では外傷性脳損傷者の自己認識に焦点を当て、修士と博士論文では幼少期に複雑性トラウマを経験した人々の自己評価と自伝的記憶に注目しました。
トラウマ(単純 / 複雑)
心理的トラウマは、個人が一般の生活では経験しないような、心理的に強いストレスがかかる出来事を指します。トラウマの例として、戦争、自然災害、交通事故などの生命の危機を感じる出来事や、レイプ、虐待などの他者からの個人の尊厳を毀損するような体験(例:いじめ)があります。
トラウマは大きく二つのカテゴリーに分けることができます:単純性トラウマと複雑性トラウマです。単純性トラウマは単発的なトラウマ(例えば、交通事故)を指し、複雑性トラウマは対人関係で繰り返し起こるトラウマ(例えば、虐待やネグレクト)を指します。複雑性トラウマの影響は、単発的なトラウマよりも広範囲に及び、継続的であることが知られています。単発的なトラウマの影響を過小評価するつもりはありませんし、複数の単発的なトラウマ(例えば、交通事故の後に自然災害に見舞われ、家族を失うなど)を経験すれば、その影響も大きくなることは知られています。しかし、私の興味は常に「幼少期の複雑性トラウマ」にありました。それは、自己形成に影響を及ぼすからです。そして、それがレガシーバーデンから来ることが多いからです。幼少期の複雑性トラウマには、身体的虐待(例:暴力、暴行、体罰など)、身体的ネグレクト(例:満足な食事、清潔な住居や衣類が与えられないなど)、精神的虐待(例:屈辱、威嚇、強迫、意図的に無視するなど)、精神的ネグレクト(愛情や関心の不足、欠如など)、性的虐待(性的行為を強制したり見せることなど)、そして家庭内暴力があります。幼少期の複雑性トラウマの影響については多くの研究が行われており、その中でもよく知られている測定方法の一つがACEs(Adverse Childhood Experiences、逆境的小児期体験)です。詳しくはこちらのリンクをご覧ください: ACE Questionnaire for Adults。
複雑性トラウマクライアントに対する心理療法
あなたは心理療法についてどれくらい知っていますか?心理療法、セラピーを受けたことはありますか?
複雑性トラウマを経験したクライアントへのセラピーとして、一般的に三段階アプローチが推奨されています。例え精神疾患の原因が現在(ストレス)、過去(トラウマ、鬱)、未来(不安症)から来ているとしても、現状を安定する事はトラウマセラピーの第一目標だと思います。特に、複雑性トラウマセラピーの場合、現状が安定しない内に過去のトラウマを再処理する事で自殺願望が高まったり、鬱が酷くなったりするので段階を経る必要性があるのです。私のセラピーでは、まずクライアントと共に現在の生活を見つめ、安定させることを目指し、その後過去の記憶を処理してより良い未来を作り出します。このプロセスが長期的なものであることはご想像いただけると思います。
マインドフルネス - 自己認識を育むためのツール
マインドフルネスという言葉を聞いたことがありますか?マインドフルネスは、心理療法の一部としてだけでなく、ビジネスやスポーツのパフォーマンスを向上させるためにも広く使用されるようになりました。ここでマインドフルネスについて簡単に説明したいと思います。
(1)マインドフルネスとは
マインドフルネスは仏教の考えに基づいており、1979年にジョン・カバット・ジンによって提唱されました。マインドフルネスとは、「今、ここ」における内外の経験に意図的に注意を払う心理的プロセスを指す英語の用語です。これをクライアントに説明するとき、私は、マインドフルネスのプロセスには、単に何かを意識するのではなく、次の 3 つの態度 Curiosity(好奇心); open-mindedness(柔軟な心、見方); a non-judgmental attitude(批判的でない態度)が必要であることを強調します。例えば、マインドフルに何かを食べる時には、たとえそれが普段食べ慣れているものや得意ではないものであっても、初めて食べるかのように好奇心を持ち、柔軟に、非批判的な態度でそれを見て、嗅いでみて、手で持って、味わうといったように、赤ちゃんが初めて何かを食べる瞬間を想像してみてください。
(2)なぜマインドフルネスなのか?
マインドフルネスは、うつ病や不眠症の一因である反芻を管理するのに非常に効果的であることが知られています。心の病気は意識が過去(こうすべきだった・できた)や未来(こうなったらどうしよう)に行きすぎるために起こると言われており、マインドフルネスはその意識を意図的に変える方法です。 「今、ここ」に集中することで、私たちの苦しみは軽減されます。言い換えれば、過去を反芻したり、未来を心配したりする状態は、マインドレス、つまり心がここにない状態です。さらに、マインドフルネスを通じて自己認識を養うことも重要です。これにより、内外の経験から健全な距離を保つことができ、不健康な反応を減らすことができます。
(3)科学に基づいたマインドフルネス
さらに、精神疾患は前頭前野の活性化不足と関連しています。実際、前頭前野は感情を制御する役割を果たしており、マインドフルネスの実践により前頭前野が活性化されることが科学的に裏付けられています。心理学では、科学に基づいたアプローチのみが使用され、心理学におけるマインドフルネスは、仏教に由来する精神的な儀式というよりは、科学的に裏付けられたスキルです。
(4)マインドフルネスの種類
マインドフルネスにも種類があり、外部環境に注目するマインドフルネスと、内部の経験に注目するマインドフルネスに大別されます。マインドフルネスの1つ目は、(1)自分の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)を通じて外界に注意を払うことです。自分の内部の経験に焦点を当てるには、(2) 呼吸などの身体的症状、(3) 思考、(4) 感情に焦点を当てるマインドフルネスを使用できます。
(5)マインドフルネスを実践する様々な方法
マインドフルネスを実践するには 2 つの方法があります。一つ目は集中した認識で、1 つのことに集中します。たとえば、目を閉じて呼吸だけに集中します。そして、二つ目は起こっているすべてのことに集中するオープンアウェアネス。たとえば、オープンアウェアネスのマインドフルネスを使って自分の呼吸を意識するだけでなく、同時に他の身体的症状、思考、感情も意識することが出来るかも知れませんね。集中認識を使用して自分の五感の 1 つまたは身体的症状に注意を払うことは、比較的単純なマインドフルネスの形式なので、初心者でも簡単に行うことができます。
今は色々なアプリやビデオクリップがあるので、ご自分に合ったマインドフルネスを探して練習してみる事は、自己認識が高まりメンタルヘルス改善に良いと思います。